これからライダーになる人へ①

16歳で免許を取得してからというもの、寝ても覚めてもオートバイのことばかり考え、趣味も仕事もオートバイといった人生を送ってきた私ですが、これからライダーになろうとしている人へのアドバイスとして、久しぶりにオートバイに関することを少しばかり書いてみようと思います。

最初にしっかりと書いておきたいことは「安全」についてです。
この安全にもハードとソフトがあります。
前者はヘルメットをはじめとする体を守るためのプロテクター類や、他車からの視認性を高めるための反射素材です。
後者はライダー自身の運転技術や心がけ、もしくは心構えなどのことです。
オートバイは車とは違い、生身の人間が不安定な二輪の乗り物に乗って走るわけですから、転倒や衝突をすると体に受けるダメージは半端ではありません。
先ずはしっかりとした性能を有するヘルメットは必須です。
単なるデザインや流行で選ぶのではなく、安全規格をクリアした信頼のおけるものを購入することを強く勧めます。
具体的には最低でもJIS規格の2種、さらにスネル2010規格を取得した物をお勧めする。
価格も4~5万円はするが、自分の命を守る物であることを考えれば、ここは絶対にけち臭いことを言ってはいけない
そしてオープンフェイスタイプではなくフルフェイスタイプを強くお勧めする。
ヘルメットに関しては「過剰装備」や「オーバークオリティー」ということは絶対にない。

最近ではエアバックのように膨らみ、頸部や胸部を守ってくれるセフティージャケットもあるので、このような物も積極的に検討することをお勧めする。
また、肘や膝に装着するパット類も大いにダメージを軽減してくれる。
このような備えは自分だけではなく、例えば車にぶつけられたときに怪我が軽く済んだり命が助かれば、相手の人生をも守ることになる。
つまりオートバイに乗るということはそれだけの社会的責任も背負うことになるということなのです。

さて、次にオートバイの車種の選択です。
これからオートバイに乗ろうとする人の多くは教習所で中型免許を取り、250ccか400ccあたりの排気量のオートバイにのることになるのでしょうが、80年代から90年代にかけてのオートバイブームの頃とは違い、若者のオートバイ離れが進んだこともあって、各メーカーとも国内販売の車種が減り、また当時のような「走り」を前面に打ち出したモデルは姿を消しております。
そのような状況ですので、最近はライダーの平均年齢は確実に上がっており、中心世代は40代以上ではないでしょうか。

オートバイと一口に言っても、様々なカテゴリーのモデルが存在します。
大きく分けてオンロードタイプとオフロードタイプがあり、前者の中でさらにメガスポーツ・スーパースポーツ・ネイキッド・アメリカン・クルーザーなどのタイプに分類され、さらにビッグスクーターと呼ばれるカテゴリーもあります。
画像は左がネイキッド、右がアメリカンと呼ばれるタイプです。
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これがオフロードタイプと呼ばれるモデルです。
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これがスクータータイプです。
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私自身はオンロードタイプ・オフロードタイプの両方に乗ってきましたし、また両方のレースにも参加してきました。
その経験で言うならば、最初に乗るオートバイはずばりオフロードタイプをお勧めします。
その理由は、車重が軽く取り回しがしやすいことはもちろん、オンロードモデルに比べて減速時や加速時のサスペンションの動きも大きく、「オートバイの基本的な動き」を習得するのにもってこいなのです。
さらに乗車位置やライディングポジションの違いから、オンロードモデルよりも目の位置が高く、前方の視認性が良好です。
そして、最も大きな理由としては、元々が不整地を走ることを想定しているため、道路に溜まってた砂や、雨の日などにスリップした時にもリカバリーがしやすいのです。
先ずはオフロードバイクでライディングの基礎やオートバイの物理的な動きをしっかりと覚えるのが安全で確実なライダーへの近道と断言できます。
これは私が40年以上オートバイに乗りつづけ、また教える立場にあったことで導き出した結論です。

ま、それでも好みや諸々の理由で、最初からオンロードモデルに乗りたいのであれば、出来る事ならアメリカンモデルやビッグスクーターは避けた方が賢明と思います。
なぜならこれらのモデルは運動能力が低いからです。
例えばアメリカンモデルは元々は映画「イージーライダー」に登場した改造車のチョッパーがその原型となっており、走行性能よりもスタイル優先なのです。
とはいっても、メーカーが販売するからにはそれなりの安全性や運動能力はあるのですが、やはり長めのホイールベースやキャスター角のせいで咄嗟の動きが緩慢で、判りやすく言えば「危険回避能力」が低いのです。
要はアメリカの真っ直ぐな道をのんびりと走るためのスタイルで、日本の道路事情に合っているとはいえません。
論外なのはスクータータイプです。
これはもうオートバイとは「二輪」という部分だけが共通で、別の乗り物と言っても過言ではありません。
小径のタイヤで直進性を確保するためにホイールベースを伸ばして補っているため、例えば砂や雨でリヤが流れた時に、ライダーの着座位置からかなり後方でタイヤが滑ることになります。
そしてシートにまたがってステップに足を乗せ、タンクをニーグリップしているオートバイとは違い、単に椅子に腰かけているようなライディングポジションでは積極的なコントロールはほとんど不可能です。
物理的に見ても構造的に見ても、かなり無理のある乗り物、それがスクーターです。
ですので、オンロードタイプから選ぶならば、やはりオーソドックスなスポーツモデルを選ぶべきでしょう。
運動能力の高さは危険回避能力とイコールであると言っても過言ではないですから。

次回はソフト面、つまり運転のコツや「生き抜くため」の心得みたいなもの、さらに細かなテクニック面などを書いてみましょうかね。