鬼平なら身銭を切った

【産経抄】鬼平なら身銭を切った…舛添都知事の公用車での別荘通い 4月29日


江戸町奉行というのは、今でいえば、東京都知事と警視総監、東京地裁所長を兼ねたようなポストだった。警察の仕事のなかで、放火、盗賊といった凶悪犯を取り締まったのが、火付盗賊改方(ひつけとうぞくあらためかた)である。

 ▼池波正太郎さんの『鬼平犯科帳』シリーズで、時代劇ファンにはおなじみの役職であろう。役目に励めば励むほど、金がかかる。幕府から与えられた役料だけでは、とても足りない。主人公の長谷川平蔵は、家に伝わる書画骨董(こっとう)を売り払って、密偵たちに配る金を工面していた。池波さんはエッセーのなかで、現代の日本人にとっても、「身銭を切る」ことの大切さを説いている。

 ▼さて、平成の江戸町奉行、東京都の舛添要一知事はどうだろう。「週刊文春」のスクープ記事によると、この1年間ほぼ毎週末には、公用車で神奈川県湯河原町の別荘に通っていた。テロや大地震が起きても都庁に急行できない、危機管理上の問題も指摘されている。
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 ▼舛添氏といえば、スイートルームとファーストクラスがセットになった、大名旅行のような豪華な海外出張が批判されたばかりである。身銭を切っての贅沢(ぜいたく)なら、誰も文句は言わない。知事が派手に蕩尽(とうじん)しているのは、れっきとした公費である。
▼池波さんは、戦後復員してからしばらく、脚本家修業をしながら、都庁の職員をしていた。税金の取り立てや差し押さえの仕事も任されていた。都民の血税のこんな使われ方を知ったら、もの申さずにはいられないだろう。
 ▼舛添氏は、公用車での別荘通いについて、「ルールに従ってやっており、問題はない」と述べている。たとえルール上問題はなくても、「『男の作法』には反している」。26年前に亡くなった、池波さんに代わって言いたい。