鰻うんちく②

鰻うんちくの第二弾です。
前回の記事でも「鰻に関する誤解や俗説」について書きましたが、今回もそのテーマで書きます。
今日車で走りながらラジオを聴いていると、パーソナリティー鉄崎 幹人さんhttp://www5.ocn.ne.jp/~tetsu/が以下のようなことを仰っておられました。
話の脈絡としては、ぶりっ子の女性は養殖、対して素のままの女性を天然に例えて、どちらが好みか?みたいな会話の流れから、氏は「養殖のほうが美味い魚だってあるんだよ。 例えば鰻なんかがそうで、天然物は皮も身も硬くって、食べなれた養殖のほうが美味い」というような内容でした。
う~ん・・・ 私は氏の日ごろの放送をたまに聴くのですが、なかなか素晴らしいことを仰っておられ、共感できる部分も多々あったのですが、今日は少し残念でした。
放送は不特定多数の人が聴くわけですし、また、その影響力も相当なものです。
天然鰻を食べたことのない人がこれを鵜呑みにしてしまうと、「天然=硬い」の印象を与えてしまいます。
ただ、氏が過去に食した天然鰻は実際に身も皮も硬かったのでしょう。

たしかに、他でも天然は硬いとか、大型の天然鰻は硬いなどといった話をよく耳にします。
自分で鰻を釣ることを趣味としている釣師ですら同じようなイメージを持った方もいます。

はっきり言います・・・・  それは大きな誤解ですっ!(ι`・ω・´)ノ キッパリ!!

あ、言いきってしまいましたが、たしかに硬い天然鰻ってのも存在します。
規格品の養殖物と違い、天然は品質がピンキリですから。
でも、そんな天然鰻は鰻屋さんに入荷しませんし、仮に入荷したとしても選別の段階ではねられてしまいますので、消費者が口にすることはまず無いと思います。
ではなぜこのような誤解というか、間違ったイメージが存在するのか・・・
それは多くの場合が自分で釣った天然鰻をちゃんと調理できていない、つまり調理の未熟さによるものです。
具体的には、「焼き」や「蒸し」などの加熱不足がほとんどで、これによって「皮がゴムみたい」とか「身に弾力があり過ぎて・・・」などの間違ったイメージが出てくるわけです。

養殖鰻はその年に獲れたシラスウナギを半年ほどで蒲焼サイズに成長させ出荷するわけですが、これを「新仔」と呼び、一冬越した物を「ヒネ仔」と呼びます。
概ね、新仔は柔らかくヒネ仔は硬いとされていますが、対して天然鰻はその水域の餌の量や水温にもよりますが、4~6年ぐらいかけて蒲焼サイズに成長するわけで、これを養殖物と同じように調理すれば当然「硬い」となるわけです。
例えが適切ではないかもしれませんが、ブロイラーと軍鶏・豚と猪を同じように調理したと考えてください。
天然鰻は養殖鰻よりも調理に時間がかかります。
それは割く前に氷〆にしておとなしくさせる作業の段階でその違いを痛感します。
養殖物は氷水に漬けると3分ほどでおとなしくなりますが、天然物は20分から30分はかかります。
加熱の工程においてもその差は歴然で、特に「蒸し」を入れる江戸焼きなどでは、養殖物の数分に対して、60分近くの蒸しが必要な個体まであります。
焼きの工程においても、個体差によって皮や身への加熱度合いはまちまちで、まさに一本一本を見極めながら焼く技術と知識が要求されます。
スーパーなどで売ってる蒲焼などは工場のベルトコンベアでまとめて焼くのですが、これは品質がほぼ一定の養殖物のみで可能な方法でです。
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    ベルトコンベアで焼き上げ、タレづけ               焼き上がったら急速冷凍

私の友人のキャバクラ大好きな鰻職人は「養殖物しか触ったことのない職人は天然物を焼けない」と言い切ってます。
私もそう思いますし、実際、ある釣り人が自分で釣った天然鰻を近所の鰻屋に持ち込んで焼いてもらったところ、職人が割くだけで手こずり、焼き上がりも硬くてイマイチだったとの話を聞いたことがあります。
日本で流通する鰻の99%以上が養殖鰻で、それしか触ったことのない職人が大半を占めているので、これはいたしかたないことなのかもしれません。

話が少し横道にそれますが、このように調理に時間も手間も、そして熟練した技術も要求される天然鰻は、鰻屋さんの経営効率から考えれば、やはり厄介な代物で、扱うお店がほとんどありません。
それによって需要が減り、さらにそれにともなって天然鰻を捕る川漁師さんも減るので、ますます流通量が減るのもうなずけますね。^_^;

硬いとされる天然鰻、それも大型は特に硬いとの誤解は全て未熟な調理技術によるものです。
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大型の天然鰻の割き                  瀬戸内産と日本海産の相乗り天然うな重

個々の身質やサイズに応じて、ちゃんとした調理をされた天然鰻(もちろん上質の物)は決して硬くありません。
それどころか、養殖物では味わえないような身と皮の食感を味わえます。
脂の質や香りも実に秀逸で、これを一度味わうと二度と養殖物には戻れなくなります。

さて、ここで結論です・・・ 
ちゃんと調理した天然鰻は美味いっ!(ι`・ω・´)ノ キッパリ!!