シラスウナギ激減 うな研としてできること

さて、久しぶりに「鰻」に関する記事です。
先ずはこの新聞記事をご覧ください。
http://mainichi.jp/select/biz/news/20120305mog00m040010000c.html

2月辺りから新聞やテレビでこの話題をご覧になられた方も多いと思いますが、そうなんです、鰻がピンチなのです。
我々日本人が食べている鰻は全て天然です。
「えっ!  鰻ってほとんどが養殖じゃないの?」と思われるかもしれませんが、それはある意味間違いである意味正解なんです。
私やその仲間が釣る鰻も、そして一般的に流通している鰻も、すべてはマリアナ海域で生まれたものです。
ニホンウナギ(Anguilla japonica)はマリアナで孵化した後、北赤道海流に乗って西へ流れ、一部はミンダナオ海流に乗ってフィリピン方面へ、残りがさらに西へと進み黒潮に乗って北上します。
何割かは対馬海流に乗って九州西岸や中国・韓国方面に流れていきます。
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海流図                        孵化直後の鰻の赤ちゃん

この鰻の赤ちゃん(レプトケファルス)が沿岸部の河口付近に流れ着くころには前述のシラスウナギと呼ばれる数センチの稚魚に成長しており、それをシラス漁師さんが網ですくって捕獲します。
それを養殖業者が買い取り、養殖池に入れて養殖するわけです。
そして、この網をかいくぐって川に登り、概ね5~6年かけて成長した個体が親鰻となって再び生まれ故郷のマリアナへ産卵に向かうわけです。
海で生まれて川で成長、つまり鮭と逆ですね。
つまり、私が釣ってる天然鰻も、町の鰻屋さんで出てくる蒲焼も、またスーパーで売ってる冷凍の蒲焼きも、元々はマリアナ海域出身の天然物なんです。
解りやすく言えば鰻はすべて天然で、途中からの生い立ちが違うだけなのです。
100%自然環境下で成長したものと、途中から人間の手によって成長したものの二通りしか存在しません。
もちろん、大学などの研究室では人工ふ化による「完全養殖」も成功はしていますが、これはあくまで実験レベルでの話で、まだまだ商業レベルには達していません。

現在の新聞やテレビの報道は「うな丼が食卓から遠のく」みたいな偏った報道ばかりです。
これは、私のような鰻釣りを趣味とする者からすると、なんかピントがずれているような気がします。
「鰻」という食材が減って値段が上がり「業界や消費者が大変だ」みたいな報道ばかりですが、問題はそういったことではなく、ウナギというひとつの種が減ってしまったことで、これがさらに進めば「絶滅危惧種」とかになってしまうかもしれません。
では、なぜ鰻が減ってしまったのか・・・・?  その理由として考えられることは・・・
シラスウナギの捕り過ぎ?
②河川や環境の変化。
③海流の変化。
三峡ダムhttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E5%B3%A1%E3%83%80%E3%83%A0や中国海域の水質の悪化。
シラスウナギの漁季と接岸時期のズレ。
⑥うな研のメンバーが釣り過ぎた。

上記の理由それぞれについて私なりに考えてみました。
①元々は天然鰻がしか無かった時代に始まった鰻料理ですが、文政年間に平賀源内が丑の日に「う」の字のつくものを食べることを提唱したことにより、一般庶民にも人気が広まり、鰻の需要が増えました。
明治に入って養鰻が始まり、ますます日本の鰻消費量は増えました。
戦後はこの日本の需要に目を付けた台湾や中国でも養鰻が盛んになり、当然シラスウナギの需要も高まりました。
シラスウナギの段階で捕獲されれば、その時点で死滅回遊と同じで、辛うじて網をくぐって川に登ることが出来た鰻も、待ち構える川鵜や釣り人の危険に晒されながら成長し、性成熟してようやくマリアナへと下るわけです。
となると、シラスウナギ漁が始まってからは年々親鰻も減り続けてきたとなります。
新聞などによると「シラスの漁獲量は1960年代前半の200トンから年々減少し」とありますが、これは一番獲れた時期であるだけで、シラス漁師の数や統計の取り方も関係してくるので、これはあくまで漁獲量であり、絶対的資源量ではありません。

②三面護岸やダム建設、水質の悪化、それに伴う餌の減少など、我が国の河川環境の変化で鰻が育ちにくくなった。
これは今更ここで書くまでのことでもないと考えます。

エルニーニョ現象やらなんやらで海流が変化し、シラスウナギの来遊ルートが変わった?
マリアナで孵化した仔魚は北赤道海流に乗って西へ進み、その後黒潮に乗って北上する。黒潮に出会う前に、ミンダナオ海流に乗ってフィリピン東岸に流れていくグループもあり、近年は前述の理由でその多くがそっちに行っているのでは?もしそうならこれも死滅回遊となります。

④これに関しては、その中国海域の汚染がどれほどシラスウナギや親鰻に影響してるのかは正確な調査データが存在しないため、なんとも言えないところではあるのですが、賢明な皆さんなら安易に想像がつくと思います。
事実、あの三峡ダムが2006年に完成してから目に見えてシラスウナギの不漁を伝える報道が増えたと感じています。

シラスウナギの漁期は都道府県によって多少違いますが、概ね12月から4月までとなっています。
もし、先に書いたような理由で、シラスウナギの来遊の時期がずれているとしたら・・・?
そもそも、シラスウナギの漁季は、その年の土用の丑に合せて成長させる養鰻の都合に合わせたものです。
仮に漁期を後にずらせば、たくさん捕れるかもしれませんが、それでは最も需要が高まる土用の丑には間に合わず、年を越して翌年の出荷となるためコスト増となり、またサイズ的にも多くの鰻屋さんが敬遠する大型サイズとなっしまうため、これも簡単にはいかない。

⑥に関して言えば・・・
因みに私が昨年釣った数は、間違いなく過去最高でしたヽ(^o^)丿
でも・・・・ 99%がリリースサイズ・・・(T_T)/~~~
で、実際に食べたのは自家消費で5本ほど。
家内と二人ですから一人あたり2.5本。
うなぼうずさんでも昨年は30本ほどとのことで、家族や親せきの方と食されていますので、一人当たりせいぜい4~5本ではないでしょうか?
やっちゃんに至っては、ここ数年鰻そのものが釣れていないので、ゼロヽ(^o^)丿 
ネットなどで見てみると、鰻好きの夫婦が毎週のように鰻屋巡りをしているブログや、週に一回は鰻を食うおっさんのブログなんかもあります。
そこまでいかなくとも、月にに一回の贅沢として、家族全員でスーパーの鰻を食べるのが楽しみみたいな記事も何処かで見ました。

まあ、こうやって見て行けば、③の海流の変化以外は我々人間にその原因がありますね。
商業目的での捕獲と書きましたが、けっしてそれ自体を否定するつもりはありません。
伝統ある日本の食文化の中で、鰻屋さんが「蒲焼」をはじめとした鰻料理の数々を考案してくれたお蔭で、我々も鰻の美味しさに目覚め、そして今があるわけです。
でなけりゃ、誰があんな気持ち悪い魚を食おうと思いますか?
因みに「鰻の業界」とはシラス漁師さんや養鰻業者や鰻の卸問屋、それに蒲焼きを作る業種として「活鰻」「加工」の二者が存在します。
前者は自店で割いて調理する、いわゆる町の「鰻屋さん」で、250年からの歴史を有しています。
後者は国内外の工場のベルトコンベアで焼いて、冷凍や真空パックで出荷し、スーパーやワンコインうな丼店に流通させる業態で、供給量としては桁違いに後者が上回っています。

で、先月からうな研メンバーと夜な夜なこの問題について、うな研として何ができるかを語り合いました。
そして悩んだ末に出した結論が以下のようなものです。 

※以下うな研トップページより抜粋。
この10年間、シラスウナギの漁獲量が減少傾向にあります。特に最近3年間の少なさは異常ですし、とりわけ今年の激減は、種の存続の危機ではないかと考えさせられるほどです。このような事態をうけ、すでに昨年度からウナギの資源保護のため9月以降の成魚の捕獲を禁止した漁業組合や河川もあります。今後、都府県レベルでも禁漁期間を設ける動きが進むはずです。

うな研として、こうした公的な資源保護の動きを注意深く見まもり、新たに定められた規則を遵守していくのは当然ですが、資源保護に対してより積極的でありたいという思いから、有志メンバーで「うな研として今できることは何か」「趣味のウナギ釣り師として意識すべきことは何なのか」を話し合いました。もちろんメンバー個々の考え方には多少の温度差がありましたが、生きものの命で遊ぶ釣り師として、自らの意識を見つめなおす機会にもなりました。

発足以来、うな研が主催してきたウナギ釣り大会には、型の部・数の部・総合の部の3部門がありますが、今回の話し合いにより、当面の自主規制として「数の部の休止」と「エントリーサイズの引き上げ(50cm→60cm)」を決めました。今後も、公的な規制の動きに注意しながら自主規制の形を柔軟に変えて行こうと考えています。

また、今回の話し合いでは「ウナギ釣り師として、大学などが行う研究に貢献できる道があれば協力したい」という意見も複数ありました。我々うな研メンバーは全国各地にいますし、夜な夜な 釣行を繰り返していますので、フィールドワークでは研究機関を上回る部分もあるはずです。この強みを活かすチャンスがあれば積極的に動きたいと考えていま す。

とまあ、皆で知恵を出し合って、このようなことを決めたのですが、ただ、ここ10年は年々シラスウナギの数は減っているとの報道にも関わらず、我々が釣るウナギの数が大きく落ち込んでるような印象はありません。
その川や水域の環境にもよりますが、概ねシラスウナギは2~3年もすればエンピツサイズからエントリーサイズぐらいには成長します。
となれば、シラスウナギの量が顕著に減りだしてから10年余りですから、2007年ごろからは我々の釣果にも変化が見られるはずですが、実際に釣っている我々の釣果と報道による数字のズレがどのようなメカニズムというか、カラクリによって起きているのか、個人的にはそこが最も興味のある部分でもあります。ヽ(^o^)丿