アクセル側・ブレーキ側

書庫に新たに「オートバイの話」っちゅうのを設けました。
ここではオートバイにまつわる色々なことを書いてみたいと思います。

オートバイに乗り出してから40年近く。

その間趣味としてだけではなく、生活の糧としてもオートバイに乗り続けてきたそんな私がこれまでに体験したことや会得したこと、また今思ってることや回想録、そして時効を迎えたであろうことを今後つらつらと書いていくつもりですが、ま、読まれる方はぱらまたの独り言程度に思って見てください。

で、今夜のテーマは
「アクセル側・ブレーキ側」です。
オートバイにながく乗ってる人でも、意外とこれを知らない人が多いように思います。
少し前に、ベテランのバイク便ライダーと話す機会があったんですが、彼ほどのライダーでも知らなかったことに少し驚きました。
「アクセル側・ブレーキ側」・・・ 要するにリヤタイヤのブロックの減り方を表現するときに使う用語です。

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ここでは解りやすくするためにオフロード系タイヤの画像を使いますが、ロード用のタイヤでも同じです。
赤と緑で塗ってある場所がオートバイの加減速によって、路面との摩擦で減る部分です。
リヤタイヤの赤の部分が極端に減るライダーはかなりアクセルの開けっぷりが元気であることがわかりますし、逆に緑の部分が極端に減るライダーはリヤブレーキの使用頻度が高いか、もしくは頻繁にロック気味になってることがわかります。
で、次はフロントタイヤの場合ですが、後輪駆動であるオートバイのフロントタイヤは後ろから押されて転がってるだけの状態ですので、当然アクセル側は存在せず、ブレーキ側のみとなります。
オートバイは駆動はリヤタイヤのみですが、制動は前後別系統のブレーキ操作によって行うわけで、ここにそのライダーのブレーキの前後配分というか、入力の度合い、依存度が現れるんですね。
これらのブロックの減り方を見ればそのライダーの乗り方というかクセみたいなもんがわかり、強いて言うならば「どんな傾向の事故をやる可能性が高いか」みたいなもんも見えてくるんです。
私が過去に色々なライダーにタイヤの減り方から「お前はこんな感じで近いうちに転ぶぞ」とか「お前はフロントブレーキがきつ過ぎるから近いうちに握りゴケするぞ」とか、またはアクセル操作やブレーキ配分のクセとその危険性を指摘しても、本人は「いやぁ、自分はそんな乗り方してませんよ・・・」とか「いや、自分はそんな感じで乗ってるつもりはないんですが・・・」とかの反論が返ってくることもあったのですが、人間の感覚とはかなりええかげんなもんで、それに対して「物は嘘をつかない」わけで、物理現象として目の前にあるタイヤがすべてを物語ってくれてます。
事実、私が指摘した通りのパターンでそのライダーたちは事故りました。
ま、幸いにもみんな治る程度の怪我で済んだので、その後は自分のライディングを見直して、ライダーとしてワンランク上達してくれましたが、これも命あってのものだねですので・・・
これらのライダーのタイヤの減り方と事故の事例を具体的に説明しますと・・・
例えば、握りゴケ君に関して言えば、彼のフロントタイヤを真横から見れば、ブロックがいわゆる「ノコギリ減り」しており、対してリヤタイヤのブレーキ側がほとんど減っていない状態でした。
加えて、前後のブレーキパッドの減りや交換サイクルを見れば彼のブレーキのクセが一目瞭然でした。
要するに彼のブレーキは、前後配分が8:2ないし9:1程度、場合によっては10:0であると思われます。
これは本人が意識してそのような配分にしているわけではなく、結果としてそうなっているのです。
つまり、本人は6:4か5:5ぐらいでかけているつもりなのですが、フロントブレーキへの入力が一瞬リヤよりも早いため、フロントフォークが沈んで浮き上がりかけたリヤタイヤにブレーキをかけている状態で、それはほとんど制動に役立ってない状態になっています。
ライダー本人は自分の感覚と減速のズレを感じて、そこでさらにフロントブレーキレバーを強く握ります・・・
つまり、ライダーの思っている前後の入力配分と、実際に有効な前後の制動力に大きなズレが生じているわけです。
ま、現代のオートバイはタイヤもフロントフォークも、また車体などすべてが高性能ですので、大半の場合こんな下手糞なブレーキングでも何とかなるのですが、私が乗り始めたころのオートバイなら瞬く間にフロントタイヤがグリップを失ったり、フォークが捩れて転倒していました。
それでもいくら高性能になったとはいえ、物には物理的限界がありますので、現代のオートバイでもそれを超えれば破綻して痛い目に遭います。
フロントブレーキとリヤブレーキの理想的な入力配分というか、有効な制動力配分は、そのオートバイの前後荷重配分や舗装路・未舗装路、またドライ・ウエットなどの条件で微妙に変わってくるので、一概には言えませんが、一般路のドライであれば私は6:4から7:3あたりが理想かと思います。
ただ、この理想の状態にもっていくには前後への入力の順序が大事で、握りゴケ君のようにフロントが早いとだめです。
リヤブレーキを一瞬先にかけ、それからフロントブレーキへ入力すれば車勢が安定し、自分のイメージした減速に近くなるはずです。
教習所では「前後同時に」とか教えてるみたいですが、ま、これでもフロントが早いよりはましかもしれません。
オートバイのブレーキ、特にスポーツタイプや大型車はフロントがでっかいダブルディスクで、リヤはそれよりも小さなシングルディスクといった組み合わせが一般的ですが、これは物理的にも車体後部で引きずられているリヤタイヤより前部で踏ん張ってくれるフロントタイヤに依存度が高いのは容易に理解できます。
ただ、リヤタイヤよりも接地面積の小さいフロントタイヤで最大の制動効率、つまりロック寸前の状態を作り出すにはリヤブレーキの使い方が肝心で、「せっかくのフロントブレーキを生かすも殺すもリヤ次第」と言えます。
ここまでごちゃごちゃと書いてきましたが「如何に上手に減速するか、如何に確実に止まれるか」がオートバイに乗るうえで最も大事で、基本中の基本やと思います。
加速はアクセル開けてシフトタイミングやクラッチミートさえミスらんかったらええんで、よほどのアホでもないかぎりそこそこの期間乗ればマスター出来ますが、ことブレーキングに関しては何年乗ってても下手なライダーが多く見受けられます。
またそんなライダーに限って舶来の高級なブレーキシステムに変更してたりするんですけどね・・・(-_-)
昔、レースをやってた頃に、先輩から「ポートを磨く前に腕磨けっ!」ってよく怒鳴られました・・・^_^;
ま、あくまで趣味の世界なのでカスタムやライディングファッションに情熱を注ぐのもええんですけど、好きなオートバイを末永く楽しく乗るために、またそれを許してくれてる家族や大事な人たちを悲しませないためにも、ライディングの基本みたいなもんを真剣に考えてみることが何より一番大事やと思います。