2月14日産経抄より転載

日本の古い政治家の中には、何百人もの「お付き」を従えて外国を訪問し、その地の権力者と面会することを無上の喜びとする人たちがいる。政権交代直後の6年前の暮れ、当時飛ぶ鳥を落とす勢いだった民主党小沢一郎幹事長は、140人以上の国会議員を含む600人余を引き連れて、北京を訪ねた。
 ▼出迎えた胡錦濤国家主席は、国会議員一人一人と握手するサービスぶりをみせた。議員たちは、喜々として握手するため列をなしたが、中国の「皇帝」に隣国の臣下たちが拝謁するかのようだった。その結果はどうだったか。
 ▼民主党政権時代、3人の首相はいずれも中国が嫌う靖国神社に参拝しなかったが、両国関係は国交正常化以降、最悪の状況となった。ちなみに、このとき胡主席と握手した議員の多くは、いま議場にいない。小沢氏も民主党から離れた。

 ▼さすがにそんな大時代的なことをする政治家はいないだろうと安心していたところ、かつて小沢氏の側近だった自民党二階俊博総務会長が約1400人を引き連れて訪韓した。小沢訪中団と違って国会議員は少なく、旅行業関係者が大半だが、ご一行さまには県知事、市長もいる。

▼おかげで朴槿恵大統領と面会できたが、案の定、慰安婦問題の早期解決を求められ、彼は記者団にこう語った。「まったくその通りだ。日本にも言い分はあるが、理屈を並べるだけで解決しないのはおかしい」。

 ▼二階氏は中国と韓国、それに観光業者がことのほかお好きなようだが、理屈を曲げてまで相手にお追従するのが、政治家の役目だと勘違いしている。安倍晋三首相は、施政方針演説で「改革」を36回連呼したが、まずは誤った歴史観にまみれた「古い自民党」を改革するのが先決である。